気持ちの言葉ではなく、3つの実務を見る

「妻とは気持ちが離れている」「もう夫婦じゃない」。既婚の彼がそう話すと、離婚は近いと感じます。けれど、気持ちの言葉は、彼が離婚に向けて動いているかどうかを教えてくれません。言葉は誰にでも、いつでも言えるからです。

離婚という出来事は、実務の積み重ねで進みます。住まいが分かれ、専門家に相談し、お金の取り決めを話し合う。この流れは、外から見える形で残ります。だから、彼の動きを知りたいときは、次の3つを順に見ます。

この記事は、彼の気持ちの深さを測るものではありません。彼が離婚に向けて何をしたかを、見える形で並べるためのものです。気持ちが本物かどうかと、離婚に向けて動いているかどうかは、別々に確かめられます。

別居:住まいと生活の実態が分かれているか

「別居している」という言葉だけでは、実態は分かりません。見たいのは、住まいと生活が実際に分かれているかどうかです。

確かめられる形で出てくるものには、次のようなものがあります。

ここで気をつけたいのは、確かめる相手を彼本人に限ることです。配偶者に連絡して様子を聞くこと、自宅を訪ねること、彼の跡をつけることは、あなた自身を危うい立場に置くため勧めません。見せてもらえないものは、確認できないものとして置いておきます。

次に、別居という状態の読み方です。別居は、離婚に向けた動きの1つになりえます。ただ、別居していても離婚の話が出ていない夫婦はいます。別居は、離婚の準備の1つの場面であって、離婚の手続きそのものではありません。だから、別居が確かめられても、残りの2つ、弁護士とお金を続けて見ます。

別居の実態が分かる話を、彼から聞いたら、聞いた日付と一緒にメモに残します。「4月に、来月から別の部屋で暮らすと聞いた」のように書いておくと、その後に何が起きたか、何が起きなかったかを並べて見られます。メモは、彼と共有しているスマホやクラウドに同期されない場所に置きます。

弁護士:相談から調停の申立てまで進んでいるか

2つ目は、専門家に相談したかどうかです。弁護士に相談しなくても、夫婦の話し合いだけで離婚が進む場合はあります。だから相談の有無だけで決めつけず、相談したという話がどこまで具体的かを見ます。

見るのは、相談したという話の中身です。「弁護士に相談してる」という言葉だけでなく、いつ、どんな内容を相談したのか、その後どうなったのかが、彼の口から具体的に出てくるかどうかを見ます。

裁判所の説明では、夫婦の話し合いで離婚がまとまらない時やできない時は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てられます。調停では、離婚そのものだけでなく、未成年の子どもがいる場合の親権者、子どもと離れて暮らす親との交流、養育費の金額なども話し合えます。財産分与や年金分割、慰謝料についても、あわせて話し合うことができます。

調停まで進んでいれば、彼の側の動きは、はっきり形になっています。申立てには、申立書や夫婦の戸籍謄本などの書類が必要です。書面を彼が見せてくれるなら、それは言葉よりも確かな材料です。

見せてもらえないときも、責める必要はありません。調停の内容はとても私的なもので、見せたくない事情もありえます。見せてもらえなかったという事実だけを、確認できなかったこととして記録に残します。

ここでも、彼の場合に離婚の手続きがどう進むのか、進めるべきなのかといった個別の判断は、この記事では書きません。弁護士に相談して確かめる事項です。

お金:財産の分け方・生活費・養育費の話が出ているか

3つ目は、お金の話です。お金の話は、金額や書面という形で出るため、動きが具体的かどうかを見分けやすい部分です。

見るお金の話は、主に3つです。

財産の分け方

裁判所の説明では、財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際や離婚後に分けることです。当事者間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てられます。

彼が「財産はこう分ける予定だ」と話すとき、その中身がどこまで具体的かを見ます。持ち家、預貯金、車など、何を対象に、どう分ける考えなのかが出ているか。話し合いはすでに配偶者との間で行われているのか。ふんわりと「いずれ話す」だけなら、まだ動き出していません。

生活費

別居中の夫婦の生活費は、婚姻費用と呼ばれます。裁判所の説明では、分担について話し合いがまとまらない場合は、婚姻費用の分担請求調停を使えます。

生活費を家庭に送り続けていること自体は、離婚の意思があるかどうかを示しません。婚姻費用は別居中の夫婦の生活費の分担を指す言葉で、離婚の条件とは別の話だからです。見るのは、その生活費の話が「離婚までの取り決め」として配偶者との間で出ているかどうかです。

養育費

子どもがいる場合は、離婚後の養育費の話が出てきます。離婚の調停では養育費の金額なども話し合えるとされています。養育費の話が金額や支払いの方法まで出ているなら、離婚後の生活を具体的に考えている状態です。

どれも、数字や書面が出てくるほど、離婚への動きは具体的です。反対に、お金の話になると話題が変わる、「そのときになったら考える」とだけ言う。その場合は、お金の面の動きは確認できていません。

3つとも動いていないときに起きていること

別居の話はあるのに実態が見えない。弁護士の話は出るが、中身が出ない。お金の話は、いつも先送りになる。3つとも、彼の言葉の中にだけあって、見せてもらえる形になっていない。

この状態は、彼が離婚に向けた動きを、まだ始めていないことを示しています。彼の気持ちが偽りだと決めつけているわけではありません。気持ちはあっても、動きにはなっていない。その区別だけを、そのまま受け取ります。

そのうえで、確認できないことを、確認できたことのように扱わないでください。「離婚に向けて動いているのだろう」と思って待つのではなく、「確認できていない」と置いておく。置いておいたうえで、あなたの側で確かめる日付を決めておきます。たとえば「次の春までに、弁護士に会ったかどうかを、彼から聞けるか」のように、確かめることと時期を1つにします。

3つの中で、少しでも動きが確認できたものがあれば、それは前に進んでいる部分です。そこだけを取り出して、他の2つが止まっていないか、見直してみてください。1つだけ動いていても、残りが止まっているなら、全体としてはまだ途中です。

彼の動きは、いまどこまで来ているか

ここまでの3つを、あなたの状況に当てはめてみます。

それぞれ、彼が見せてくれたことと、彼の言葉で聞いただけのことを分けて並べると、確かめられていることと、まだ言葉だけのことが見えてきます。

待ってきた時間は、あなたの側の事実です。彼がどこまで動いたかは、彼の側の事実です。この2つを分けて見ることが、次に何を確かめればいいかを決める手がかりになります。待つかどうかを決めるのは、あなた自身です。